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ガンズ・アンド・ローゼズのデビューは衝撃的であった。ファースト・アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』1枚のみで、既に時代を代表するバンドの風格があった。日本においても、例えば80年代末から90年代初頭のロッキングオンは、あたかもファンジンのような体でガンズを大プッシュ。渋谷陽一はこの新人バンドを評して、音楽をやっていなければドラッグやアルコールに依存していたアクセルは墓場、スラッシュは刑務所がお似合いの場所だろうと語っている。洗練されたお洒落なポップに染まっていた80年代のロック・シーンに、時代遅れのセックス、ドラッグ、ロックンロールを現代によみがえらせたガンズは、戦争の記憶が薄れ高度成長を謳歌していた昭和50年代の日本に突如「神軍平等兵」として登場した奥崎謙三のような衝撃があった。

しかし、わずか1枚でガンズの名声と評価を確立したファースト・アルバムに続くセカンド・アルバムは、様々なトラブルから難産を強いられることとなった。待ちきれないファンのためにデビュー前の自主製作盤がミニアルバムとしてリリースされるなど、結果的にセカンド・アルバムの発表まで実に4年の月日がかかってしまった。今では4年のブランクなど大きなものではないが、鮮烈なデビューを飾ったバンドにとって営業戦略的には矢継ぎ早に次のアルバムが必要だったはずだ。リリースが難航していたのは何も音楽的な要因のみならず、ドラッグ中毒でバンドメンバーの脱退があったことなど、ファッションではなく本当に堕落したロック生活を体現しているのが、ガンズの魅力でもあった。

1991年、ドラマーとキーボードを新たに加えレコーディングを行ない、待望のセカンド・アルバムがリリースされるというニュースは世界を駆け巡った。そして、あたかも4年という長期間の鬱憤を晴らすかの如くファンに提示されたのは実質的なダブル・アルバムであった。1992年にスプリングスティーンは『Lucky Town』と『Human Touch』という2枚の異なるアルバムを同日リリースしているが、ガンズは『Use Your Illusion』という共通タイトルで、それぞれVol.1とVol.2という形態でのバラしてのリリースであった。パンキッシュなファースト・アルバムに対し、『Use Your Illusion』はキーボード・メンバーが加わっただけあって音に厚みが増し、まるでビートルズのホワイトアルバムのようにハードロック、バラード、古きロックンロール、そしてカバー曲など、多種多様な曲調が同じアルバムに混在、しかもそれが美しい調和を保ち違和感なく並んでいるという名盤に仕上がっていた。歌詞が異なるバージョンで「Don’t Cry」をVol.1と2の両方に収録するなど、コンセプト的にも共通するものがあった。

本作は、その『Use Your Illusion』のデモ音源を収録したタイトルである。レコーディングに時間をかけたこともあり、同アルバムからはアクセルに渡されたアドバンス・ミックスや、ラフ・ミックスなど数多くの流出音源が存在することが確認されている。そんな中で、本作はあくまでデモ音源に焦点を当てて構成されている。ガンズの大作にして名盤の制作過程を垣間見ることが出来るタイトルである。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。