【WINGS OVER AMERICAに6曲採用】 話は変わるが、この全米ツアーからはアルバム「WINGS OVER AMERICA」及び映画「ROCK SHOW」が作られている。そしてまるで都市伝説のように、これらはシアトル公演の音源と映像がメインで使われているという話が独り歩きしている。このようなデマがどこから発せられたかは定かではないが、情報が少ない90年代までは、まことしやかにこのように囁かれていたものである。しかし現在ではそれぞれがどの公演地の演奏が使われているか、曲ごとにわかっている。そしてライヴ・アルバム「WINGS OVER AMERICA」の冒頭を飾る「VENUS AND MARS/ROCK SHOW/JET」のメドレー及び次の「LET ME ROLL IT」、そして「CALL ME BACK AGAIN」「BLUEBIRD」の6曲が、このシンシナティ公演の音源が使われていることが判明している。この6曲という数は全公演地の中で最多の採用なのである。ちなみにシアトル公演からはわずか「遥か昔のエジプト精神」1曲のみにとどまっている。この事実は、まさにこのシンシナティ公演の演奏の出来の良さを反映したものに他ならない。
なるほど確かに「VENUS AND MARS/ROCK SHOW/JET」のメドレーは「WINGS OVER AMERICA」を聴き込んだ耳にすっと馴染むものである。演奏後の「How you feeling, feeling alright? OK!」というMCもサウンドボードで聴き慣れたものと全く同じである。しかし一方で、聴けばわかる通り「WINGS OVER AMERICA」とは完全に一致しない箇所も多々見受けられる。例えば「ROCK SHOW」において「ジミーペイジのようだ」と歌う前の部分でポールは歌詞を間違えているが、ライヴ・アルバムではきれいに間違わずに歌われていたりする。
「WINGS OVER AMERICA」がリリースされた当時、初めてそれを耳にしたファンは驚いたという人が多い。コンサート全編を通して全くミスがなく完璧な演奏が収録されていたからである。もちろんこれは後に数多くの修正が施された結果であり、前述の歌詞ミス箇所が一致しないのも、後から録り直されているからである。演奏部分のみならず、歓声までもダビングのためにファンを集めスタジオで録音し直しているくらい、「WINGS OVER AMERICA」とは「作られた」ライヴ・アルバムなのである。しかし本作はオーディエンス録音であり、当時、当日、その場所で鳴っていた音がそのまま収録されている。「WINGS OVER AMERICA」のオープニング・メドレーは、本作に収録のシンシナティ公演のものであるが、是非その点にも着目して聴いていただければと思う。
【音質について】 本作は、高音質オーディエンス音源で収録されている。サンプルを聴いていただければわかる通り、1976年の他の公演、例えばロサンゼルスなどと比べても遜色のない高音質なものである。驚くべきことは、この音源は今まで全く世に出ていなかった、トレード間ですら流通していなかった完全初登場音源である点である。今までもシンシナティ公演の音源は2種類出回ってはいたものの、音質がドイヒーなものしかなく、Mクローデル・レーベルの「THE GREAT RETURN OF AMERICA」と「WINGS OVER SEATTLE」に、それぞれボーナストラックとして部分的に収録されていたのみである。それが、この資料的にも重要なシンシナティ公演の、ゴイスーな第3種目の音源が21世紀になって発掘されたことは全くもって驚くべきことである。もちろん本作で初登場、初CD化である。1976年アメリカン・ツアーを代表するタイトルになることは間違いない。
【内容について】 残念ながらメインとなる音源にはいくばくかの瑕疵が存在する。「JET」の冒頭及び、「SILLY LOVE SONGS」の終わりから「BEWARE MY LOVE」の冒頭までの2か所に欠落がある。それらはシンシナティ同日の別ソースでキレイに補完されているので、完全収録であることに変わりはない。またほんの1秒にも満たない元テープの物理的な要因による音飛びが数か所存在したため、それらも同日別ソースにて補完しており、コンサート開演前のざわめきから終演後の様子まで、コンサート完全収録している。
【1975年11月10日ブリスベン公演】 本作にはボーナストラックとして1975年11月10日ブリスベン公演より8曲を収録している。こちらも初登場音源で、サウンドボード音源とクレジットされていたのだが、ヴォーカルの感じがオーディエンスにも聴こえるので、今は結論を出さずにおきたいと思う。いずれにせよサウンドボードかオーディエンスか迷うくらいの高音質であることにはかわりなく、また音質に恵まれないブリスベン公演とあって、わずか8曲ながらこのような高音質音源が発掘されたことは喜ばしいことである。しかも1975年ツアーの特長であり、「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」のリリースに伴いセットリストが変更になったあおりをくって翌1976年はセットリストから外された「LITTLE WOMAN LOVE ? C MOON」を収録しているのも素晴らしい。
【WINGS OVER CINCINNATI 1976】 本作はライヴ・アルバム「WINGS OVER AMERICA」に最多6曲採用された1976年5月27日シンシナティ公演を、トレード間にも一切出回っていなかった初登場の高音質オーディエンス音源で完全収録している。特にこのツアーを象徴する「VENUS AND MARS/ROCK SHOW/JET」のオープニング・メドレーは、本作が公式にも採用されている演奏なのである。その日を通して全編聴けるという資料的にも優れた公演である。またボーナストラックには1975年11月10日ブリスベン公演を、こちらも高音質初登場音源にて収録している。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。
RIVERFRONT STADIUM CINCINNATI OH U.S.A. May 27, 1976 DISC ONE 01. Venus And Mars - Rock Show - Jet 02. Let Me Roll It 03. Spirits Of Ancient Egypt 04. Medicine Jar 05. Maybe I'm Amazed 06. Call Me Back Again 07. Lady Madonna 08. The Long And Winding Road 09. Live And Let Die 10. Picasso's Last Words 11. Richard Cory 12. Bluebird 13. I've Just Seen A Face 14. Blackbird 15. Yesterday 16. You Gave Me The Answer 17. Magneto And Titanium Man 18. My Love
DISC TWO 01. Listen To What The Man Said 02. Let 'em In 03. Time To Hide 04. Silly Love Songs 05. Beware My Love 06. Letting Go 07. Band On The Run 08. Hi Hi Hi 09. Soily
FESTIVAL HALL BRISBANE AUSTRALIA November 10, 1975 10. Let Me Roll It 11. Little Woman Love - C Moon 12. Lady Madonna 13. The Long And Winding Road 14. I've Just Seen A Face 15. Letting Go 16. Live And Let Die 17. My Love